さまざまな業界にAIが導入され、日増しにその存在が大きくなってきています。

人間がやっていた仕事は、どんどんAIに取って替わられるようになり「今ある仕事の半分はAIがすることになる」という話や、アメリカでは「2011年に小学校に入学した子どもの65%は、現在、世の中にない職業に就く」という話もあります。

リユース業界でもAIの参入がスピードアップしており、以前ブランド買取店の最新情報をまるっとお伝えします!」「買取業界最大手のコメ兵がついにフリマアプリ『KANTE(カンテ)』を発表!」などの記事で触れてきましたが、今回も老舗質屋さんの鑑定士を訪れ、リユース業界におけるAIについての最新情報を伺いました。

1.大手質屋「ものばんく」が目利きAIアプリを共同開発

引用元:http://monobank.jp/shop/

売りたいときドットコム(以下C)「ブランド買取店の最新情報をまるっとお伝えします!」のコラムにもありましたが、最近の新しい動きとしてはどんなものがありますか?」

店主(以下主)「一番ホットな話題は『ものばんく』さんが、九州大学系のテックベンチャー、チームAIBODと共同で、目利きAIアプリを開発したことですね。
このアプリ、簡単に言うと、写真を1枚送るだけで、真贋判定や査定ができるものなんです」

C「それはすごい!!
開発にあたった『ものばんく』さんはどんな会社なんですか?」

主「下関市に本社を持つ老舗質店で、業界では、代表の吉田悟社長のことを知らない人はいませんね

C「業界のトップリーダー的存在なんですね。
こちらのアプリは、簡単に言えば『鑑定アプリ』なんでしょうか?」

主「それが違うんです。吉田さんは「目利き」という言葉にとてもこだわっていらっしゃいます。

というのも、チームAIBODは、九州大学と九州先端科学技術研究所、九州工業大学から生まれたテックベンチャーなんですが、そのAIBODと、ものばんくさんが今年2月に設立した会社が「メキキ」という名前なんです

C「鑑定士の想いが込められているような…」

主「そうなんです。「目利き」という言葉が鍵なんですよね。
吉田さんは鑑定にものすごく重点を置かれていて『常にプロであれ』ということをいつもおっしゃっています。
目利きに関して、並々ならぬ情熱を持っているんですよ」

C「長い年月かかって開発されたんでしょうね」

主「それが私たちも突然知った状態で…驚きましたよ!
きっと内部で温めに温めたのではないでしょうか」

2.40万件のデータをフル活用。写真が1枚あれば査定可能。

C「先ほど写真1枚でなんでもできる、というようなことを伺いましたが、もう少し細かく教えてください」

主「はい。写真1枚でブランドの型番やアイテムを特定し、査定までできるアプリです

C「本当に画期的ですよね。LINE査定だと、外側、内側、角スレも撮影してくださいって言われますもんね…」

主「もちろん真贋判定も可能で、精度はバッグなら95%以上だと発表されています」

C「なぜそんな高い精度が可能になるんですか?」

主「ものばんくさんは、西日本最大級の業者オークションを運営しています。ですから創業以来60年間で蓄積された膨大なデータがあるんですよ。
今回は、その中の40万件のデータを活用したそうです

C「それはすごい量ですね!」

主「さらにすごいのは、ものばんくの会員企業約900社に、β版を無償で提供しているということです

C「いや…ものばんくさんって太っ腹ですね!」

主「5月にスタートするそうで、私も今から楽しみにしています」

C「私たち一般ユーザーにも使えるんでしょうか?」

主「それはもう少し先でしょうね。
吉田さんとしては、まだ開発率は30%で、取り扱うブランドも、エルメスやシャネル、ルイ・ヴィトンといった人気上位5ブランドのみ
ですから今後は対象ブランドやカテゴリーも増やし、精度もアップさせたところでオープンにされるのではないでしょうか」

C「私も使ってみたいです」

主「そうですよね。
コピーかどうか見分けて、どういうラインなのかも判別し、査定までしてしまう。だから『鑑定アプリ』と呼ばずに『目利きアプリ』という名前を付けたんでしょうね

C「こういった取り組みは他もしているんですか?」

主「全国78店(2018年4月現在)を展開するエコリングさんも、AIに取り組んでいるそうで、ほかにも正式発表はされていませんが、大手5、6社はやっているのではないでしょうか。
どこも目指しているのは人件費の削減。
業界全体がAIに敏感になっているというか、はやっているなという体感がありますね」

C「なるほど」

主「前述の吉田さんは『動産』をいかに流動的に回していくか、いつも考えているそうです。
新しいことを温めて温めて出す、何というか…もったいぶる方なので本当のことはわからないのですが(苦笑)、エンドユーザーが使えるようになれば、心配せずに買取店に持ってこられるようになる。
それを実現したいのではないでしょうか

3.マザーズ上場「なんぼや」のAIへの取り組みは?

引用元:https://nanboya.com/

C「全然関係ないんですが、先日大阪に行った時『なんぼや』さんの広告をあちこちで見たんですけど、やはり業績も伸びているんでしょうか」

主「実はなんぼやを展開する『SOU』が、2018年3月22日に、東証マザーズに上場したばかり。
設立から6年なんで異例の早さですね」

C「すごいですね!」

主「私の店がある名古屋では、質屋や買い取りといえばコメ兵さんなんですが、すごい勢いで抜かれたという感じです」

C「そこまで大手のなんぼやさんなら、AIにも注目しているのでは?」

主「それが違うんです。
資本の面から考えると、モノバンクにできて、なんぼやにできないということはないので、考えてはいると思うんです。でもやっていない」

C「何か理由が?」

主「それが今日の結論にも繋がっていくんですけれど、なんぼやの嵜本社長は接客というのをとても大切にされてるんですね。
モノバンクの吉田さんが『プロであれ』とおっしゃっているのに対し、嵜本さんは『コンシェルジュであれ』とおっしゃっています

C「そうなるとなんぼやさんの接客は優れている?」

主「ネットの口コミなどを見ると、正直ばらつきがある印象を受けます。
でも、嵜本社長ご自身は『最終的には人対人』といつもおっしゃっていますね」

4.人VS AI。今後の課題とは?

C「そうなると、人対AIという対決のようになりそうなんですが、実際鑑定士の方々は、AIに対してどのような考えを持っているのでしょうか?」

主「そうですね。業者間オークションや講習会で話していると『AIアプリはどんどん入ってくるけど、最終的には人対人だよね』っていう結論になっています」

C「どんなにAIが進化しても、人にしかできないことがある?」

主「はい。目利きアプリを共同開発した吉田さんも『モノの鑑定は、人間の直感とか感性とかスキルが必要だ』といつも言われているので、嵜本さんも吉田さんも鑑定士も、根本的な考えは同じなんだと思います」

C「でも吉田社長はAIに携わった。一般ユーザーから見ると矛盾しているような…」

主「私の個人的な考えになってしまいますが、人間の目利き力、鑑定力を信じているからこそ『AIにどれだけのことができるのだろう?』という興味があったのではないかと思うんです

C「AIが人間に勝てないと思うからこそ、やってみた」

主「はい。『動産鑑定士』として、AIというものの利用方法を考えているのではないかと感じましたね」

C「具体的に、人間…鑑定士じゃないとできないことはどんなことなんでしょうか?」

主「例えば自分の売りたいものをAIが鑑定している時、ちょっと聞きたいこととか『これも売りたいな』なんて思った時、AIはそれには答えられないわけです

C「確かに…査定はできても、会話はできないですもんね」

店「嵜本社長も、買い取りに関して『あなたの思い出も買い取ります』ということを言われているんです。
しっかりとお話を伺い、その方の思い出だったり、人生だったりを傾聴できるのって人間だけだと思うんですよ。
査定が出た場合にも、AIでは、どうしてその金額になるのか、今の市場や人気を含めた説明はできませんよね

C「それこそが買取店とか鑑定士と関わる醍醐味?」

主「そう思います。嵜本社長はそういう考えがあるので、AIには手を出さないんじゃないかなと、個人的には思っています」

C「AIを開発した吉田社長と人を大事にする嵜本さんが、実は同じ考えを持っている」

主「行動は違えど、根っこの部分は同じじゃないかと思いますね。
それから個人的な話なんですが、先日弊社の新店がオープンしたんですが、リピーター率が100%なんですよ。それって、やっぱり人だからだと思うんです」

C『あのお店のAIに会いに行こう!』とはならないですもんね…」

主「そうなんです。だからこそ、接客がダメなら、全く意味がなくなる

店「接客で嫌な思いをするくらいなら、AIでさっさと機械的に査定してもらったほうが、こっちは気楽ですもんね」

店「だからこそ、鑑定力や査定力のほかにも、人間力だったり、機械では習得できない『カン』とか『感覚』が必要になってくると思いますね

5.まとめ/買取店や鑑定士に、本当に求められること

C「今回のお話をまとめると、最終的には『人』ということでしょうか?」

主「私はそう思います。AIの進化は日進月歩ですが、だからと言って人間が要らなくなるわけではない」

C「ということは、鑑定士に危機感はあまりない?」

主「それはちょっと違いますね。
AIはブランドのバッグや財布は鑑定できると思いますが、美術品は難しい。そうなると『人間しかできないこと』の要素が狭まります。
結果として、鑑定士一人ひとりの鑑定力が求められんではないかと思っていますね」

C「できない人はどんどん淘汰されていく…」

主「はい。鑑定士も二極化されるという感じです。
でも淘汰されれば、残った鑑定士やお店に対して信用度は上がるので、ユーザーにとってはメリットになりますし、まだまだグレーの多い業界の信用度も高くなると思っています

C「AIの話を含め、今後の買取業界の課題はなんだと思いますか?」

主「今お話しした鑑定士の鑑定力が一番になるのですが、他にも感じることがあって…。少し本題とはずれてしまいますが、吉田さんのお店も私の店も質屋なんですね。

質屋って昔から日本にある文化そのもので、吉田さんご自身は、その文化が衰退していくことを、非常に悲しんでいらっしゃいます。
質屋さんって二代目で終わるって言われていて、実際自分の周りでも二代目でなくなってしまった店がたくさんあるんですよ」

C「確かに…さびれている質屋さん、たまに見かけますもんね」

主「ネットで検索されるような店はまだよくて、それ以外のお店は情報が入ってこないし、アップデートしようとも思っていない」

C「昔ながらのアナログを貫いているんでしょうか」

主「そうです。ものばんくは全国に5店舗しかないんですが、質屋なのに大丸の中に出店したり、日本で初めて中国に支店を出したり…今も海外にしか目を向けていないくらい、積極的に活動されています」

店「確か、店内にカフェを作ったのも、ものばんくさんでしたよね」

C「ええ。ですから、質屋もこういうやり方があるんだよ、生き残るためにこうやっていけばいいんだよ、ということを提示していると思うんですね

店「質屋への愛ゆえ、ですね」

C「そうです!
私も質屋に対しての想いは強いですし、今後もどんなツールが開発されていくかはわかりませんが、質屋がずっと持ってきた鑑定力を大事にしながらも、外に目を向ける必要が私たち鑑定士に必要だと思いますね」

 

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